中高年女性のアンチエイジングに効果的な栄養素|ビタミンE・ビタミンD・エクオールは、ヒト幹細胞等の再生医療に於いても重要旭川皮フ形成外科クリニック

中高年女性の為のアンチエイジング サプリメント

中高年女性のアンチエイジングに効果的な栄養素の代表格として挙げられるのが、ビタミンE、ビタミンD、そしてエクオールです。ヒポクラテスの有名な言葉に、「汝の食事を薬とせよ。汝の薬を食事とせよ。食べ物で治せない病気は、医者でも治せない」があります。医食同源を本質を伝える言葉です。お食事で摂れればそれで十分と言えば十分ですが、なかなか十分量摂れないのも事実。不足を感じたら、素直にサプリメントで補うが勝ちです。

 「医食同源」という言葉自体は、元々は、中国の「食薬同源」思想を日本に伝える為、臨床医・新居裕久先生が、NHKの料理番組『きょうの料理』の特集「40歳からの食事」の中で発表した造語です。「食薬同源」の薬という言葉は、化学薬品と誤解される恐れがあり、それを回避する為に「薬」の漢字を「医」に代え、拡大解釈したものだったんだそうです。その後の健康ブームを切っ掛けに「医食同源」の概念が一般にも広く知られるようになり2000年代からは発想の元になった中国へ逆輸入!されています。

 しかしながら、医食同源と言う理想だけではどうしても立ち行かない時、サプリメントは有力な補助手段となり得ます。

  更なる高みを目指すなら、サプリメントを併用して整えた体を、話題の再生(誘導)療法!で磨きを掛けましょう。

昨年は、ビタミンE発見100周年だった。

ビタミンEの復習

 ビタミンE(美容通信2009年12月号)は、1922年にUniversity of California, BerkeleyのHerbert EvansとKatherine Bishopにより発見されました。ですから、今年で発見101周年!になります。元々は、食餌制限したラットを再び妊娠可能にしてしまう「物質X」として、レタスの抽出液から発見されました。tocopherolは、ギリシャ語で陣痛/分娩を意味するtocosと、もたらすを意味するfereinから造られた造語です。ビタミンEを産生出来るのは光合成を行う植物のみなので、私達人間は、食品から摂取するしか方法がありませんが、所謂狭義の欠乏症は、脂質吸収障害等でもない限り、お目に掛る事はないとされています。

 ビタミンEの構造中の環状部分は、慣用名でクロマンと呼ばれる構造で、このクロマンに付くメチル基の位置や有無によって、異なる型のトコフェロールに分類されます。8種類のvitamerのうち、食品及び人体に最も豊富且つ安定的に存在し、生物学的利用性と抗酸化作用が最も高いのがα-tocopherolで、世の中でビタミンEと称されているものの殆どが、このα-tocopherolです。

 ビタミンEは、脂溶性ビタミンとして細胞膜に存在(美容通信2021年4月号)し、フリーラジカルを消失させる事により、自らがビタミンEラジカルとなり、フリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止します。発生したビタミンEラジカルは、別名・ラグビー名物の魔法のやかんとも称されるビタミンC美容通信2009年11月号等の抗酸化物質により、ビタミンEに再生します。

 ビタミンEを多く含む食品は、ひまわり油(サンフラワー油)・綿実油・べにばな油(サフラワー油)・米ぬか油・とうもろこし油等の油脂類や、アーモンド・落花生・大豆等の種実類、キャビア・いくら・たらこ等の魚卵類、青魚、マヨネーズです。50~64歳の女性のビタミンE摂取目安量は6.0mg/日とされ、この量は1日にアーモンド20gを食べるだけで補う事が出来ます。

 

ビタミンEの慢性疾患予防効果

 ビタミンEは、主に抗脂質酸化作用、即ち、LDL酸化→マクロファージ泡沫化→プラーク生成の経路を抑制するので、動脈硬化を予防するんだ!と考えられています。しかし、それだけに非ず。様々な系を介した多角化戦略、つまり、①phosholipase A2の活性化→血小板凝集を抑制、②DNAの細胞毒性によるアポトーシスを抑制、③内因性の抗酸化物質(SOD/SOC)の産生促進、④プロテインキナーゼ(PKC)抑制→血管平滑筋細胞増殖抑制、⑤connective tissue growth factor(CTGF)の産生抑制、⑥PKB/Aktのリン酸化抑制、⑦単球上のCD36発現抑制→炎症・動脈硬化の抑制作用等で、抗動脈硬化作用を総合的に発揮しているんです。

 ビタミンEの慢性疾患予防という観点からは、欠乏症(末梢神経障害、網膜症、免疫不全、運動失調等)とは異なり、そのターゲットの疾患によって摂取目標量が異なると考えられています。

 多くの大規模免疫研究がビタミンEについてなされていますが、一番有名なのが、米国のNurses’ Health Study。34~59歳の心血管疾患の既往がない看護婦さん87,245人について、8年間観察を行ったstudyです。それによれば、ビタミンEを5.4mg/day以上摂取し続けいている看護婦さんでは、冠動脈疾患になるリスクが有意に低下していたそうです。また、日本のCirculatory Risk in Communities Studyでは、24.2mg/day以上ビタミンEを摂取していた群では、要介護認知症になるリスクが有意に低下していたそうです。ビタミンEの抗酸化作用は、うつ病の予防にも有効と考えられていますが、うつ病有病者Vs対照群では、前者は後者に比して、加重平均で0.71mg/day摂取量が少なかったそうです。他にも、閉経女性の慢性疾患として最重要とされる骨粗鬆症ですが、これに関しても、日本だけでなく海外でも多くのstudyが行われていますが、ビタミンEの摂取量は腰椎の骨密度と正の相関しますし、大腿骨骨折とは負の相関を示していたそうです。酸化ストレスが増えると、骨の吸収が進んだり、コラーゲンの架橋異常をもたらす事は知られており、どうも、ビタミンEは抗酸化作用を介して、骨密度の維持や骨折予防に寄与しているようです。運動器疾患の発生状況について長期間に亘って観察を行っているROAD studyでも、摂取量が少ないとサルコペニア(美容通信2019年2月号)(美容通信2018年9月号)のリスクが上がるとの報告がなされています。

 

Tocotrienol(T3)の作用

 2000年以降、お米や椰子に多く含有されるtocotrienol(T3)の作用にも、注目が集まるようになってきました。T3の中でも、特にγ‐/σ-T3は分子量が小さく、細胞膜の脂質二重層の中で最も動きやすいとされています。報告を幾つか列挙します。

  • マウス及び人間の前立腺癌細胞株を用いた研究では、γ‐/σ-T3が癌細胞の増殖を最も強く抑制したそうです。
  • 大腸細胞株をマウスの腸間膜に移植する実験では、γ‐/σ-T3は血管新生を抑制したが、α-tocopherolは抑制をしませんでした。
  • 人間の慢性疾患の予防に於いても、非アルコール性脂肪性肝疾患の患者さんにγ‐/σ-T3を投与したところ、ALTやfatty liver index、malondialdehyde、CRP等のパラメーターが有意に低下しました。
  • 骨量減少の女性に対してγ‐/σ-T3を投与したところ、非投与群に比して、骨代謝マーカーの血清NTXと血清sRANKL、酸化ストレスマーカーの尿中8-OHdGがいずれも低下し、T3が酸化ストレスを軽減し、骨吸収を抑制すると推察されます。

ビタミンD

ビタミンDの復習

 ビタミンD(美容通信2013年3月号)は、カルシウムと共に骨形成と関わる脂溶性ビタミンとして知られていますが、その作用はそれに留まらず、体内の様々な部位で、細胞増殖や分化の促進、免疫や神経系のシステムの制御、酸化ストレスの軽減、抗菌作用、抗炎症・抗癌作用、心血管疾患の発症抑制作用等の多彩な作用があります。その為、ビタミンDが欠乏すると、Ⅰ型糖尿病、心血管疾患、悪性腫瘍、認知機能の低下、うつ病、自己免疫疾患、アレルギー等の多くの疾患に罹りやすくなります。更には、不妊症や流産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病等の合併症のリスクを押し上げる事も分かってきました。

 ビタミンDは、サケやマグロの魚類やキノコ類から摂取が可能ではありますが、主たるものは、日光浴をした皮膚で生成されるんです。でも、それじゃあ、シミが~ぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!と、世の女性陣から悲鳴が上がりそうですが、サプリメントって救世主がいますのでご安心を(笑)。

 

ビタミンDと妊娠

 ビタミンDは日光暴露により生成される為、季節(日照時間)による変動が大きいヨーロッパでは、体内の貯蔵型ビタミンD(25OHビタミンD)は夏に上昇し冬に低下する傾向があります。それが故かどうかは断言は出来ませんが、ヨーロッパでは、3~5月に出産のピークを迎えます。

 ビタミンDは、卵巣予備能や卵胞発育に関与しています。大人女子に於いて、ビタミンDと卵巣予備能を評価するAMH抗ミュラー管ホルモン anti-Mullerian hormone)値の間に相関関係が認められていますし、ビタミンD不足の女子にサプリメントで補充を行うと、AMH値は上昇する事が分かっています。また、ではAMH値の異常高値を示しますが、ビタミンDの補充により、排卵障害の一因とされているAMH値が是正されて至適化される為、卵巣発育が順調に進むようになります。

 *註・多嚢胞性卵巣症候群とは、女性の排卵が阻害されて卵巣内に多数の卵胞が溜まり、月経異常や不妊を生じた病態で、明確な原因は不明。エコー画像で見ると、卵巣の表面に沿って粒がぐるりと数珠繋ぎになっている様子から、「ネックレス・サイン」と呼ばれます(←パール・ネックレスではありません、悪しからず(笑))。

 着床や妊娠維持の過程に於いて、男性由来の遺伝子を含む受精卵を受容する免疫機構が獲得されていないと、着床や妊娠維持が難しくなります。その免疫機構は、ナチュラルキラー(NK)細胞やヘルパーT(Th)細胞から産生されるサイトカインが担っています。Th細胞は、細胞性免疫を誘導するTh1細胞と液性免疫を誘導するTh2細胞に分類(美容通信2019年9月号)されますが、これらは制御性T(Treg)細胞がコントロールしています。正常妊娠では、胚の着床・妊娠維持に於いて、細胞障害性のあるNK細胞やTh1細胞が減少し、Th2細胞が優位になります。しかし、体外受精を何度繰り返しても妊娠しなかったり、流産を繰り返す場合は、Th1/Th2比が高値を示しています。ビタミンDは、NK細胞やTh1細胞を至適に抑制し、Th2細胞やTreg細胞を増加させ、妊娠を誘導する効果があります。

 

ビタミンDと不妊

 提供卵子(←卵子の提供者は、全て若いギャルズたち!なので、卵的には当たり外れの問題はない)を用いた体外受精・胚移植後の臨床妊娠率に於いて、25OHビタミンDが<30ng/mlと低い症例と比較して、取り敢えずは正常範囲とされる≧30ng/ml(←理想値ではない!)の女性で有意に高いとの報告があります。

 また、別の論文によれば、日本人の不妊症の女性の、ナント、87.3%が、血清25OHビタミンDの値が<30ng/mlと、ビタミンD不足だったそうです。更には、Th1/Th2細胞比の異常高値も認められ、免疫学的に妊孕能が低下しているものと思われます。

 

ビタミンDと流産

 一難去ってまた一難ではありませんが、漸く妊娠に漕ぎ着けたのに、ビタミンD不足は流産を引き起こす可能性も指摘されています。更には、ビタミンD不足の不育症の女性では、抗核抗体、抗リン脂質抗体、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が有意に高く、且つNK細胞が高いそうです。ビタミンDの欠乏は、Th細胞だけでなく、他の免疫機構に於いても、胎児を拒絶する傾向にあり、流産しやすくなる事が示唆されています。

 

妊娠中及び新生児期のビタミンDの重要性

 妊娠中のビタミンD不足により、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、早産の発症リスクが高まる事が知られています。更には、ビタミンD不足の妊婦さんがビタミンDをサプリメントで補充するだけで、合併症の発症のリスクを下げる可能性も指摘されています。特に、妊娠高血圧症候群に関しては、サプリメントを妊娠20週までに3000~4000IU(75~100μg)/日摂取する事で、リスクを軽減出来るとされています。

 更に、妊娠中及び新生児期のビタミンD不足は、免疫機構やエピジェネティクスを通して、その後の統合失調症、Ⅰ型糖尿病、多発硬化症の発症リスクを上げるとの報告があります。子供が欲しい!と思ったら、生まれて来る子供の為にも、妊活の共にビタミンDを摂取すべきでしょう。

 

ビタミンDの必要摂取量

 日本の厚生労働省の発表しているビタミンDの推奨摂取量は、未だに”くる病にならない為のカルシウム出納に基づいた摂取量”なので、成人で220IU/日のままです。この値は、ビタミンD研究の専門家が推奨する量の1/10以下に過ぎなとされています。

 基本的には、採血で血中の25(OH)ビタミンD濃度を測定し、過不足を判定し、摂取量を調整するのが望ましいとされています。因みに、サプリメント等の補充をしていない未治療の患者さんって意味ですが、HISAKOのクリニックの採血結果は、殆どが、所謂欠乏症。重篤な欠乏症もぼちぼち散見はされますが、至適値の人は見た事がない!(←まあ、HISAKOのクリニックを受診する人達は、皮膚的に何らかの問題を抱えていますから…。完全なる健康体の人は、そもそも来ない。)

  • ~20ng/ml 重症な欠乏症!
  • 20~30ng/ml 所謂、欠乏症
  • 30~50ng/ml 取り敢えずは、欠乏症とは言わないってだけの値。正常値とも言う。
  • 50~80ng/ml 健康の為にって意味で推奨される、理想的な値。至適値。疾患のリスクが最小限になるのが、この範囲内とされています。
  • 80~100ng/ml 癌患者の、癌の成長速度が遅くなる。
  • 100ng/ml~ ビタミンD中毒症状の発生率が増える。つまり過剰!
  • 150ng/ml~ 毒性あり!

 妊娠に於ける推奨されるビタミンDのサプリメント量は下記の表の如くとされています。HISAKO的には、もうちょっと摂った方が良いんでないかい?と思いますが。

25OHビタミンD 推奨サプリメント量
≧30ng/ml 不要
20~30mg/ml 1000IU(25μg)
<20ng/ml 2000IU(50μg)

 HISAKOのクリニックは産科ではないので、スギ花粉症や通年性の慢性鼻炎でお話を続けますが、ビタミンDを2000~4000IUを内服してもらうと、30分~1時間で鼻通りが改善します。唯、飲み始めの頃は、大してその効果が持続する訳ではなく、精々4~6時間程度。朝晩2000IUづつ飲み続けると、3ヶ月後には、肝臓や脂肪に徐々に貯蔵されて血中濃度が安定し、それと共に症状の波も消えて行きます。症状が改善してしまえば、1日2000IUで維持するのが、一般的。食事の影響を受けないので、いつでも好きな時に服用可です。

 成人の場合、1日1万IU以下の摂取では、副作用の報告はありません。日本の厚生労働省が発表している、ビタミンDの推奨耐用摂取上限(不確定要素が重なっても、有害事象がなく安全であるとされる量)は、15歳以下で1日2000IU(0~2歳は1000IU)です。因みに、大人男子の場合、1日3000~5000IUのビタミンDが体内で消費されるそうです。

エクオール

image191 以前にも特集したエクオール(美容通信2016年8月号)ですが、最新の知見も加えての再登板です。

 1980年代後半より、日本でのホットフラッシュの頻度が欧米よりも低い理由の一つとして、大豆イソフラボンの摂取量、つまり植物エストロゲン摂取量の差にあるのではないかとの仮説から、大豆イソフラボン投与によるホットフラッシュ改善効果が検討されてきました。しかし、有効性に関する結果が一致しておらず、現状では大豆イソフラボンには十分なエビデンスがないとされています。

 2002年にSetchellらが、大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールが、他のイソフラボン関連物質より強いエストロゲン活性を示す事から、大豆イソフラボンの効果は主としてエクオールにあり!と言う「エクオール仮説」を提唱し、エクオールが注目されるようになりました。2014年には、日本に於いて初めてエクオールサプリメントが上市され、更年期障害以外にも多くの有用性が報告されています。

 

エクオールとは?

 大豆イソフラボンは、大豆に多く含まれる、色素・苦味・辛味等の成分であるフラボノイドの一種です。ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインに大きく分類されますが、このうちダイゼインが、ある種の腸内細菌により代謝されたものがエクオールです。エストロゲン活性が強いとは申しましても、体内で最も強い活性を示す17β-エストラジオールの1/100~1/1000程度しかありません。しかし、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)や選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)としての作用、更には抗酸化作用も有する事が知られており、その効果としては、更年期障害のみならず、動脈硬化やメタボリック症候群、骨粗鬆症、皮膚の皺、薄毛等の改善と、実に多岐に亘り、有用性の報告がなされています。

 エクオール産生能は、種によって差があります。牛さんや山羊さん、鶏、マウス等では、何故かは分かりませんが、人間の様な個体差ってものがなく、全てにエクオール産生能があり、ダイゼインからエクオールを産生出来ます。ところが、人間では、日本人を始めとするアジア系では約半数が、欧米人では約3割しか産生菌がお腹の中にいません。ただ、若作りの美魔女系ギャルではなく、本物のガキギャルでは、欧米人並みに生産が落ちているようですが…。

 個人の生産能を決めるのは子供の頃の食事と考えられており、大人になってからいくら頑張っても、エクオール生産菌に限らず、新たな善玉菌を生着させるのは至難の業(美容通信2019年11月号)。なので、エクオール非産生者は、無駄な足搔きをせずに、素直にエクオールサプリメントを飲んだ方がましなんですね。

 エクオールサプリメントは世に多数出まわっております。用いられるエクオール産生菌や含有されるイソフラボンの種類や量が異なり、製造販売者の拘りが夫々には反映された製品のようです。唯、以下のお話は、老舗中の老舗で、HISAKOのクリニックでも扱っているのが大塚製薬のエクエルなので、これについてです。

 

エクエルの効果

 エストロゲン受容体は、α・βを問わなければ、女性性器のみならず、ほぼ全身に分布しています。ですから、ホルモン補充療法(美容通信2010年12月号)と同様に、エクオールにも今後様々な有用性が報告されてくる可能性はあります。実際、後述の項目以外にも、手指の変形性関節症、膣症状(美容通信2022年3月号)(美容通信2022年4月号)、ドライシンドローム(美容通信2018年12月号)、甲状腺機能障害(美容通信2015年3月号)等に対しても有用性の報告がなされています。

■更年期障害

 ホルモン補充療法(美容通信2005年10月号)やプラセンタ(注射/内服)(美容通信2009年2月号)までは望まないけど、漢方薬(美容通信2005年6月号)は効かないし…。そんな悩める更年期障害族が選ぶサプリメントが、エクエル。

 更年期障害と言えば、ホットフラッシュ!が有名ですが、2015年の北米閉経学会によると、女性ホルモン補充療法以外で、ホットフラッシュの管理方法に関するposition statementに於いても、「エクオールは、更なるデータの蓄積が必要ではあるが、非産生者に於いては有効打あると思われる」と言う、条件付き推奨となっています。2019年に報告されたメタ解析でも、有意な回数の減少が認められています。

■代謝性疾患

 閉経後には、エストロゲンレベルの低下に伴い、脂質プロファイルが悪化。挙句に体重増加の憂き目に遭う事は、良く知られた事実です。BMIが25以上のエクオール非生産日本人閉経後女性に、エクオール10mg含有サプリメント(エクエル)を投与したところ、非投与群に比べ、HbA1c、LDLコレステロール、動脈硬化の指標とされる心臓足首血管指数(CAVI)が有意に低下し、耐糖能異常、脂質異常症、血管硬化への有用性が示されました。更には、閉経後モデルのラットに投与したところ、体重増加が抑制されたそうです。脂質異常症やメタボリック症候群、肥満等の代謝性疾患への有用性があると考えられます。

■骨粗鬆症

 閉経から5~10年くらいの間に、骨量は急激に減少します。エクオール非産生日本人閉経後女性に、エクオール10mg含有サプリメント(エクエル)を投与したところ、非投与群では減少してしまった骨量が、投与群では全身骨量が維持されており、有意差が認められました。

■皮膚の皺や毛髪への効果

 閉経を境に、28.5%の女子に、皮膚の乾燥や皺の増加、髪の毛のボリューム低下等の皮膚関連症状が認められたとの報告があります。皮膚の皺については、エクエルを3ヶ月間服用した群では、皺の面積率や皺の最大深さが、用量依存性に改善します。肌の張りや艶、色むら、潤い等が、70%以上改善したって報告もあります。

 髪の毛については、男子に多い、所謂河童禿とかM字(剃り込み)ハゲではなく、頭頂部の比較的広い範囲にび漫性に薄毛を認めるようになります(女性型脱毛)。エクオール非産生者では、閉経後、時間が経つに従い、総毛髪密度の低下や直径40μm未満の軟毛の割合が増えますが、産生者では変化なく、また、白髪の密度や割合も、非産生者よりも有意に低いそうです。閉経後の女子にとって、見た目の若々しさをキープする秘策となるかも知れませんね。

■要介護率や認知機能等

 エクオールを女性専科とばかりに、女子に独占させるのはもったいない!ってお話です。宮城県の70歳以上の男女を対象にした6年間に亘る疫学調査では、エクオール産生者では、要介護/死亡のリスクが非生産者と比較して、オッズ比で0.51と有意に低い事が報告されています。左図のエクオール産生能と要介護/死亡リスクに於いて、血中濃度23.6ng/ml以上の高産生能とは、エクエル10mg摂取により得られる血中濃度に相当します。エクオール以外の、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインについては、健康群と要介護/死亡群間で統計学的な差はなく、大豆イソフラボン関連の中でもエクオールの有用性が示されました。

 認知機能に対しては、エクオール産生者では、軽度認知障害リスクが有意に低いと言う日本の観察研究等が報告されており、エクオールは認知機能の低下や認知症にも有効と考えられています。

 

エクオールの安全性

 エクオールはエストロゲン活性を有する事から、安全性、特にエストロゲン感受性腫瘍への影響が懸念されます。しかし、乳癌については、「乳癌診察ガイドライン2022年版」によれば、「大豆食品、大豆食品に含まれるイソフラボンの摂取が、乳癌発症リスクを軽減させる可能性がある」と記載されています。また、エクオール産生者では、乳癌リスクが低い事も報告されています。更に、乳癌サバイバーに対しても、1日10mg以上の大豆イソフラボンの摂取により、総死亡や乳癌による死亡は不変、乳癌再発は有意に低下すると言う統合解析が報告されています。乳癌ガイドラインに於いても、食事によるという但し書きではあるものの、「イソフラボンの摂取は乳癌患者の予後を改善する可能性がある」とされています。更に、2021年に報告されたin vitroとin vivoに於けるエクオールの乳癌リスクに関するシステマティックレビューでは、「エクオールは発癌性よりも制癌性が勝っている」と結論付けられており、特にin vivoではネガティブな結果は出ていません。

 子宮内膜癌に対しても、サロゲートマーカーと言える子宮内膜厚は、エクオール群とプラセボ群の間で有意差は認められませんでした。植物エストロゲン投与が子宮内膜厚に与える影響を検討したメタ解析に於いても、24ヶ月投与までのプラセボとの有意差は認められていません。

 更には、子宮筋腫や子宮内膜症についても、イソフラボンの摂取量が増えても、リスクが変わらないと報告されています。

 これまでの日本での各RCTに於いても、明らかな有害事象は認められておらず、安全性は高いと考えられています。但し、大豆アレルギーの場合は勿論服用は不可ですし、大豆と交差抗原を有するカバノキ科(本州ではハンノキ、北海道ではシラカンバ)の花粉症、粘々成分のポリガンマグルタミン酸を触手にするクラゲ等にアレルギーがある場合は、要注意!ですが。

 

エクオール産生能を有している女子には、エクオールを投与するだけもったいない?

 もったいないかどうかと問われると…、確かにもったいないかも知れません。日本人中高年女子の約半数がエクオール産生者で、彼女達は、理論的には、豆腐2/3丁、若しくは、納豆1パック食べるだけで、相当量のエクオール産生が見込まれ、敢えてエクエルをお金を払ってまで買って飲む必要性があるか否かと問われると、微妙っちゃ微妙。しかしながら、この10年で日本人の大豆摂取量が約30%低下していますし、体調や抗生物質の摂取等の様々な影響によってもエクオールの産生量は左右されます。実際問題として、モニター調査で、非生産者のみならず、産生者に於いても、投与による全般的改善度に有意差はなく、同等の効果を示していたそうです。実際の産生量を同定するのが難しい以上…、飲んでみる価値はあるんじゃない? 足りないよりましじゃない? って結論になります。

補足・再生(誘導)医療は、更年期障害をも救うか!?

幹細胞と老化

 私達の体を構成する細胞には寿命があります。少なくとも現時点ではそれが主流の考え方であって、将来的にはデビット・シンクレアが提示する老いなき世界(美容通信2022年6月号)が現実となるとしても、です。細胞は新陳代謝を繰り返していますが、そのサイクルは細胞により大きな差があります。上皮や血液等は、常時次世代の新しい細胞に置換されていますが、骨髄の幹細胞や神経細胞は寿命が非常に長く、ほぼ置換されないと考えられています。各臓器のターンオーバーは、主に組織特異的な前期細胞が司っており、怪我をした!等の非常時の修復には、その上位の幹細胞や、骨髄から幹細胞や前駆細胞も動員されます。

 再生医療とは、機能が失われた、或いは機能を損ねた組織や臓器の再生・修復を誘導する目的で行われる医療の総称です。体内、体外を問わず、幹細胞の組織修復能を利用した様々な治療アプローチが提示されています。

 体内の幹細胞数は、お母さんから生まれ落ちた時が最も多く、年を取るにつれ、どんどんじわじわ目減りします。換言すれば、幹細胞を消耗する過程こそが、人生そのものなのかも知れません。幹細胞の減少は、組織や臓器の保全に様々な綻びを生じさせ、機能不全や組織の萎縮のみならず、再々不良に伴う線維化や石灰化が体のあちらこちらに散見されるようになります。

 

再生を誘導する

 組織や臓器の再生を誘導する医療は、大きく分けて3つのアプローチがあります。

 1つ目は組織傷害を介する手法。美容皮膚科領域の定番的な…古典的な手法かな?(笑)施術で、何でもない健康な皮膚に、敢えて鞭を振り上げ、こん棒で殴り、傷を付け、私達の体が受けた傷を(組織の幹細胞達が)必死に治す過程を利用したものです。ケミカルピーリング(美容通信2005年4月号)然り、ダーマペン(美容通信2022年12月号)然り、フラクセル(美容通信2007年2月号)然り。

 2つ目は、組織の幹細胞の微小循環を改善する手法です。ジャルプロ「スーパー ハイドロ」(美容通信2022年9月号)やサーモン注射(リジュラン(美容通信2021年10月号))、ミラノ注射(ジャルプロ)、シャネル注射(フィロルガ(美容通信2015年1月号))、血小板由来因子(自己多血小板血漿注入療法(PRP/ACR)(美容通信2006年12月号))、幹細胞培養上清液や増殖因子(PREMIUM CELLやFetoScell Follicl(美容通信2022年12月号)等がこれに相当します。

 3つ目は、①幹細胞を含む組織を単独または加工して、或いは、②幹細胞を含む組織を、①②+時には幹細胞刺激因子と共に投与する方法です。

■組織傷害を介した再生誘導

 この組織傷害を与える方法は最も原始的で、古くから美容領域で行われている手法です。皮膚表層から目的に応じた深さまで、敢えて障害を加える。それは熱変性だったり、機械的破壊だったりはしますが、これにより、表皮や真皮のリモデリングが誘導され、組織の機能回復を促します美容通信2005年4月号。流血の惨事レベルの侵襲性の高いものから、極々軽い炎症程度まで様々なレベルのものがありますが、何れに於いても、組織のリモデリングが誘導され、(傷害に応じた、それなりの!)若々しく弾力のある皮膚に生まれ変わります。

 局所の幹細胞や、血行性にリクルートされる炎症細胞や骨髄由来前駆細胞、これらが主体となって、傷害後の組織のリモデリングが起こります。損なわれてしまった細胞外基質や死んだ細胞から、増殖因子(主にaFGFとbFGF)や酵素、他にも多くのシグナル因子が放出されます。出血があれば、更には、血小板凝集に従い、α顆粒から種々の因子(PDGF、EGF、TGF-β等)も放出されます。これらの一次因子群は、前駆細胞・幹細胞に働いて活性化させると共に、幹細胞からの二次因子群の産生・分泌を促してくれます。

■微小環境を操作する再生誘導

 傷害と言う直接的な暴力手段に訴える事なく、傷害時に発生する仲介物質(増殖因子、血小板由来因子、幹細胞培養上清等)を加えて幹細胞を驚かせ、リモデリングを誘導させる手法です。ペリーの黒船来航を詠んだ狂歌「泰平の 眠りを覚ます 上喜撰 たつた四杯で 夜も眠れず」を彷彿とさせる、鮮やかな戦法とも言えます。因みに、これを北海道の方言で、「騙(だま)くらかす」と表現します。

  • 増殖因子と細胞外基質

   傷害時に発生する仲介物質(増殖因子、血小板由来因子、骨髄活性因子等)を加えて、障害が起こったんだ!と組織に勘違いさせて、(傷害時に近い)組織修復反応を誘導する方法です。

 

  具体的には、美容系では、繰り返しになりますが、ジャルプロ「スーパー ハイドロ」(美容通信2022年9月号)やサーモン注射(リジュラン(美容通信2021年10月号))、ミラノ注射(ジャルプロ)、シャネル注射(フィロルガ(美容通信2015年1月号))のような細胞外基質製剤(正しくは増殖因子等も含まれ、単体の細胞外基質製剤ではないのですが…)、血小板由来因子(自己多血小板血漿注入療法(PRP/ACR)(美容通信2006年12月号))、幹細胞培養上清液や増殖因子(PREMIUM CELLやFetoScell Follicl(美容通信2022年12月号))等です。また、外用スプレーのbFGF(美容通信2013年4月号)は、既に火傷(美容通信2009年1月号)の治療の定番として広く臨床現場で使われています。

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   幹細胞上清には幹細胞から分泌される因子(HGF、KGF、VEGF、SDF1-α等の増殖因子やエクソソーム等)が含まれており、血管や組織の新生を誘導するだけでなく、ステロイド様の抗炎症作用や線維を溶解したりする効果もあります。最近では、細胞から分泌されるアンモニア等の有害因子を除去する試みも行われています。

   また、コラーゲンやフィブリノーゲン等の細胞外基質成分も強い生物活性を持っており、固形の増殖因子として被覆材や充填剤等として臨床現場で使われています。最近では、人間の真皮や脂肪組織を無細胞化した細胞外基質シートや顆粒製剤も、海外では使用されているようです。

  • 機械的外力、圧力

   幹細胞には、機械的外力を感知する受容体も備えているんです! 力学的負荷を加える事で、再生の誘導だって夢ではありません。

  • 血流と酸素分圧

   酸素と栄養等は血流によって運搬されます。ちょっとでも酸欠状態に陥ると、すわ一大事!(←本来の表記は「すは」ですが、語源意識が薄いと判断され、現在では「すわ」と表記する事になっているんだとか。 昭和61年内閣告示の「現代仮名遣い」では、「助詞の『は』は『は』と書く」とありますが、 その例外として「すわ一大事」が示されています…)とばかりに、組織は激しく反応します。阻血状態の組織に酸素を与える(=組織の酸素分圧を上げる)と、餓死寸前のわんこさながらに”がるる!”と反応し、劇的な血流改善が認められます。酸素療法が治療としてまず頭に浮かぶところですが、ご近所レベルとしては加圧トレーニングが挙げられます。

  • 薬で、骨髄から幹細胞を動員する

   組織傷害等で発生した緊急事態は、神経や血行性の仲介物質を通して伝達され、骨髄から幹(前駆)細胞が血流に放出されるmobilizationと言う現象が起こります。GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)やAMD3100等の薬剤を静注すると、mobilizationが起こります。GM-CSFは、免疫抑制状態に対する薬剤として試行されており、単球及び好中球の機能を回復させる事が期待されています。

■細胞を用いた再生誘導

 傷害を加えたり、増殖因子や細胞外基質を投与して、皮膚等のターゲットとする臓器に存在している幹(前駆)細胞を活性化・操作する手法は、ターゲットとなる臓器に幹(前駆)細胞があってのお話。幹細胞の数が少なかったり、機能が低下してしまっている幹細胞枯渇状態では、当たり前ですが、それでは治療効果が上がる訳がありません。

 例えば、放射線障害組織。HISAKOの1年経っても骨折がなかなか癒えない(=癒着しない)腰椎は、30年前の放射線治療の置き土産で、まあ、昔は癌になってそんな長生きする人もいなかった(←今は、2個目、3個目の癌を発症する人も珍しくありませんし、HISAKOも、3年で再発して死ぬと主治医に宣告されておりました…)から、取り敢えず目の前の癌を叩いて叩いて、5年生存率をクリアすれば卒業。30年後の後遺症を考える必要性自体なかったんでしょうね(笑)。ところが、皆、予想以上に元気で長生きいきいき時代に突入してしまった。放射線治療は組織幹細胞を枯渇させ、虚血と共に組織の萎縮と線維化が生じており、最早、そこには正常な治癒能(予備能)は存在しません。放射線障害のみならず、紫外線照射(光老化)(美容通信2022年8月号)(美容通信2003年7月号)は勿論、ブルーライト照射(美容通信2003年8月号)や、更年期障害を始めとする老化に関連する疾患に於いても、組織の幹細胞密度が下がり、ターンオーバーを繰り返すうちに、消耗性に枯渇し、萎縮します。自己免疫疾患や代謝性変性疾患によって生じた慢性炎症や難治性潰瘍に於いても、同様の事が起こっています。

 分離したり培養した幹細胞の投与は、細胞加工物として再生医療等安全化確保法の規制を受けます。これまでのところ、脂肪由来幹細胞等の間葉系幹細胞が主役で、自家移植が原則とされています。

 近い将来的には、長寿を目的にした幹細胞補充療法も行われるかもしれません。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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