帯状疱疹ワクチン|シングリックス | 旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2021年2月号

帯状疱疹ワクチン|シングリックス

50歳を過ぎたら、帯状疱疹に要注意! 帯状疱疹は、子供の頃罹った水ぼうそう(水痘)のウィルスが原因で起こります。水ぼうそう(水痘)が治った後もウィルスは体内に潜伏し、日本人の成人の90%以上に潜伏しているとのデータもあります。加齢だけでなく、糖尿病や癌等による免疫力の低下や疲労、ストレス等により、50歳代から急激に発症率が上がり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。帯状疱疹予防用ワクチン”シングリックス”の接種により、50歳以上で97%、70歳以上で90%の予防効果が認められています。

 昔、品川に棲息していた頃、おもたせの定番は品川巻でした。品川巻とは、ご存知の通り、海苔巻きあられです。江戸時代、東海道53次最初の宿場町として栄えた品川は、古典落語の廓噺(居残り佐平次、品川心中等)の舞台であり、「北の吉原、南の品川」と称されるほど繁栄していました。ちょっと前、つまり、今となってはBC(Before Coronavirus!)の古き良き時代のお話ですが、品川花魁道中で賑わうお土地柄、花魁の着物の帯を品川の名産品である海苔に見立て、海苔巻きあられを品川巻と呼んでいます。品川らしい艶っぽいお話ですが、同じ帯でも、帯状疱疹の皮疹の帯は艶っぽいとかの次元ではありません(笑)。

帯状疱疹とは

帯状疱疹とは

 帯状疱疹(美容通信2006年8月号)の原因ウィルスは、水痘帯状疱疹ウィルスVZV(Varicella Zoster Virus )です。子供の頃、生まれて初めて水痘帯状疱疹ウィルスVZVに感染すると、水ぼうそう(水痘)になります。ところが水ぼうそう(水痘)が治った後も、水痘帯状疱疹ウィルスVZVは退散するのが本筋なのに、余程居心地が良いのか、知覚神経節にじと~っと身を潜めて居付いてしまう事が多々あります。論文によれば、日本人の大人の90%以上に、ウィルスが体内に潜伏しているんだそうです。

 加齢だけでなく、糖尿病や癌等による免疫力の低下や疲労、ストレス等で私達が弱っている(細胞性免疫の低下(美容通信2021年1月号))のを察知すると、反撃=再活性化して、帯状疱疹が発症します。帯状疱疹は、典型的な症例では、その名前の通り、ピリピリとした疼痛を伴う皮疹が片側の皮膚分節に沿って、あたかも帯の様に出現します。痛みは徐々に酷くなり、時には、夜も眠れない程の激痛になる事も。…大昔、氷の微笑って映画がありました。主演女優シャロン・ストーンの妖艶な姿態と、アイスピックでメッタ刺しと言う残酷な殺害シーンで話題となった作ですが、帯状疱疹後の神経痛の比ではないとは思いつつ、ついつい思い出してしまいます。「神経はね、こうやってアイスピックで刺すのに限るわ。」などと、水痘帯状疱疹ウィルスがキャサリン・トラメルの様に呟く筈がないのは分かっているのですが(笑)。

 症状の多くは上半身に現れますが、時に、顔や目、頭等に現れる事もあります。

 50歳代から急激に発症率が上がり、70~79歳の集団で最も発症率が高く、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。

■帯状疱疹の置き土産

 下記の様な、極めて嬉しくない置き土産があります。運が悪い(←前世の因果か?)とロクでもない事に見舞われると片付けるのではなく、今後高齢化が加速する日本では他人事ではないぞ!と素直に考えて、帯状疱疹の予防に勤しむと言う判断の方が無難なようです。

  • 帯状疱疹後神経痛
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 まあ、帯状疱疹自体は潜伏期を含めて精々2週間。嵐が過ぎ去るのをじっと耐えていれば良いんじゃないかと思うかも知れませんが、一度帯状疱疹に罹ると、そんな甘い希望的な観測は吹き飛びます。全員が全員、合併症を来たす訳ではありませんが、50歳以上で帯状疱疹になってしまった人の約2割の患者さんが、帯状疱疹が治ってからも、最も多い合併症とされる帯状疱疹後神経痛に悩まされます。痛みは3ヶ月以上続き(と言うか…3ヶ月以上続かないと帯状疱疹!神経痛って定義から外れるから)、長い時は数年に亘って痛みが改善されないって事も。「刺す様な痛み」とか「…焼け火箸」と称される様に、その痛みは極めて激烈にも拘らず、疼痛管理が難しいのが特徴で、(帯状疱疹が)終わってからが寧ろ地獄って表現もあながち過大とは言い切れないのが実情です( ;∀;)。

 因みに、右上図はAmazonでも販売している明珍火箸風鈴。家庭で炭火を扱う事が少なくなるにつれ、火箸は、何本かを吊るして風鈴にするという、灼熱から冷涼へと独自のガラパゴス進化を遂げました。Wikipediaによれば、戦国時代から甲冑師として鉄の加工技術を守ってきた姫路市の明珍家では、この材料に日本刀の材料である玉鋼を用い、更に美しい音色のものを現在も製作しているそうです。この音色は冨田勲の楽曲にサンプリングされたり、ソニーの音響機器の試験にも使用されています。

  • 眼部帯状疱疹

 合併症としては、帯状疱疹後神経痛の次に多いのが、眼部帯状疱疹です。水痘帯状疱疹ウィルスVZVが三叉神経の眼神経で再活性化すると発症し、帯状疱疹の患者さんの10~15%を占める頻度の高い合併症です。眼部と言う場所柄、角膜炎、結膜炎、網膜炎、視神経炎、緑内障等の様々な症状を伴い、慢性の眼部帯状疱疹では、疼痛や顔面の瘢痕化、視力低下や失明を引き起こす事もあります。

  • 耳性帯状疱疹

 また、重度な帯状疱疹関連合併症の一つには、耳性帯状疱疹(ラムゼーハント症候群)があります。顔面神経の膝神経節で、水痘帯状疱疹ウィルスVZVが再活性化すると、難聴・眩暈や耳周囲の水ぶくれ、顔面の麻痺(眉毛が挙げられない、まぶたが閉じられない、口元から水が漏れるetc.)等の症状が起こります。

帯状疱疹ワクチン”シングリックス”

 シングリックス筋注用は、50歳以上が対象の帯状疱疹を予防する為のワクチンで、水ぼうそう(水痘)の予防接種(予防接種法に基づく)に転用出来ません。

 水痘帯状疱疹ウィルスVZV(Varicella Zoster Virus )上に存在する糖蛋白質E(gE)抗原とアジュバントシステム(ASO1B)を組み合わせた、生ワクチンとは異なる組み換えサブユニットワクチンで、細胞性免疫と液性免疫応答を誘導する様に設計・開発されています。

 50歳以上の全ての年齢層で帯状疱疹予防効果を認め、50歳以上で97%、70歳以上で90%の予防効果が認められています。

 また、帯状疱疹の患者さんの6.4%に再発が認められていますが、帯状疱疹の既往がある被験者を対象にした第Ⅲ相臨床試験では、シングリックス接種によって免疫応答の増加が認められています。

 

予防接種を受けられない人達がいる。

 帯状疱疹に対する予防効果があっても、予防接自体を受けられない人がいます。

■接種不適当者

①明らかな発熱(37.5℃以上)している。

②重篤な急性疾患に罹っている事が明らか。

③過去に、このワクチンの成分によって、アナフィラキシーを起こした事がある。

 因みに、成分を列挙しておきます。水痘帯状疱疹ウィルスgE抗原、精製白糖、ポリソルベート80、リン酸二水素ナトリウム水和物、リン酸二カリウム、3-脱アシル化-4’-モノホスホリルリピッドA(MPL)、精製キラヤサポニン(QS-21)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、コレステロール、無水リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム

④その他、医師が予防接種を受けるのが不適当と判断した場合。

■接種要注意者

 まあ、ケースバイケースって人達です。

①心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患がある。

②予防接種で接種後2日以内で発熱があった。若しくは全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈した事があった。そんな過去のある人々。

③本剤の成分に対し、アレルギーを起こしちゃうかも知れない人。

④過去に痙攣を起こした事がある。

⑤過去に免疫不全の診断がなされている。又は、近親者に先天性免疫不全の人がいる。

⑥血小板減少症や凝固障害がある人。抗凝固療法を行っている人。←筋肉内注射なので、針を刺した部位が出血しちゃうかも。

 他にも、高齢者は、一般的に生理機能が低下しているので要注意だし、妊婦さんや授乳中のママに打つのも手放しで推奨出来るとは限りません。安全性も有効性も確立していません。これは、ガキんちょについても同様で、そもそも誰もした事がないので、何が起こるのか誰にも分からないってレベルです。

 

接種の具体的な方法

 シングリックスは、利き腕とは逆の腕の上腕三頭筋筋肉のど真ん中に、ぶしゃっと0.5mlの薬液を注射します。静脈や皮下への注射ではありません。

■2回打って、漸く完結! 1回だけではダメなんです。

 2ヶ月間隔で、2回の接種を行って完了です。つまり、1回目の接種から2ヶ月後に2回目の接種を行うのが標準的な方法ですが、出張で受けられない!とか交通事故で入院した!等々の止むを得ない理由で2ヶ月を超えてしまった場合は…、6ヶ月以内なら、まあ2回目の接種を良しとしよう。

 因みに、論文上では、2ヶ月後に2回目を接収した場合と6ヶ月後に接種した場合を比較したところ、どちらでも同等の免疫応答が認められたそうです。

■他のワクチン製剤との接種間隔

 インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン等の、他の不活化ワクチンの接種を行った場合は、6日以上開けてシングリックスの筋肉注射を行います。麻疹や風疹混合ワクチン等の生ワクチンの接種を行った場合は、27日以上開ければ、シングリックスの接種は可能です。

 反対に、シングリックスの接種後に、他のワクチンを接種する場合は6日以上の間隔を置く必要があります。但し、Dr.が必要と認めた場合は、同時に接種する事は可能ですが、幾ら患者さんに「私、一点豪華主義何です!」と懇願されても、薬剤同士を混ぜ合わせて一ヶ所に打つなんて暴挙はしません。ご了承下さい。

■他の帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)を既に接種している場合でも、シングリックスの接種OK!

 帯状疱疹生ワクチン接種歴の有無に関わらず、シングリックス接種によって免疫応答はUPします。ACIP(米国に於ける予防接種の実施に関する諮問委員会The Advisory Committee on Immunization Practices)では、帯状疱疹生ワクチンの接種歴のある正常な免疫能を有する成人に対して、シングリックスの接種が推奨されています。 

 

要らない置き土産を、医学用語では副反応と言う。

 副反応で、最も顕著なものが注射した部位の疼痛です。

■シングリックス接種後7日間に報告された副反応達

 多くの方で、注射部位の痛みや腫れが現れますが、これは体内で強い免疫を作ろうとする仕組みが働く為だと言い聞かせて下さい。それなら、仕方がないと諦めが付くと思います。副反応の多くは3日以内で治まります。

  • 注射した部位
    • 痛み(78%)
    • 赤み(38%)・腫れ(26%):殆どの症例で3日以内で消失しますが、熱感や発赤の強い時は、必要に応じて局所の冷湿布をして下さい。
  • 注射部位外
    • 筋肉痛(40%)・疲労(39%)・頭痛(33%)・悪寒(24%)
    • 発熱(18%):冷却やアセトアミノフェン等の解熱剤投与等の一般的な方法で処置をしますが、他の原因で発熱しているなんて事もあります。
    • 胃腸症状(13%)

■重大な副反応

  稀に、ショック、アナフィラキシー(血管浮腫、蕁麻疹、呼吸困難等)が現れる事があります。アナフィラキシーは、通常接種後30分以内に起こる事が多いので、接種後はクリニックで大人しく、スタッフにジロジロと経過観察されて下さいね。

 

接種後の注意事項

  • 接種後に失神が起こる事があるので、接種後30分程度は、クリニックで背もたれのある椅子にゆっくり腰掛けて、体調の変化がない事を確認してから帰宅します。
  • 接種した当日は激しい運動を避けて、接種部位は清潔に保って下さい。接種当日にお風呂に入っても差し支えありません。
  • 接種後に接種部位に異常な反応や体調の変化を感じた場合や、高熱、痙攣等の異常な症状が現れた場合には、直ぐにご連絡下さいね。

シングリックス マニアに捧げるエトセトラ

シングリックスはこんな薬だ!

 シングリックスは、帯状疱疹を予防する為に独自に開発された、世界初!の組み換えサブユニットワクチンです。つまり、 ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンで、生ワクチンではありません。

 左図を見て下さい。シングリックスは、水痘帯状疱疹ウイルスの表面に存在する糖タンパク質E(gE)を抗原とし、アジュバントシステムAS01Bを添加した組換えサブユニットワクチンです。

 

シングリックスの帯状疱疹予防効果

 50歳以上及び70歳以上を対象とした、2つの国際共同第Ⅲ相臨床試験の結果は以下の通り。

■発症予防効果

 50歳以上のいずれの年齢層に於いても、帯状疱疹予防効果を示しました。

 被験者で帯状疱疹を発症した人は、シングリックス群(7344例)では6例、プラセボ群(7415例)では210例で、有効性は97.2%であり、シングリックスの帯状疱疹に対する発症予防効果が検証されました。

 年齢層別(50~59歳、60~69歳、70歳以上)の解析に於いて、各年齢層の有効性は夫々96.6%、97.4%、97.9%であり、何れの年齢層でも帯状疱疹に対するシングリックスの有効性が検証されました。

 なお、ワクチン接種後4年目の有効性は、93.1%でした。

  • 50歳以上における帯状疱疹の発症
年齢 帯状疱疹発症症例数/評価対象例数 有効性(95%CL)
シングリックス群 プラセボ群
50歳以上 6/7344 210/7415 97.2%

年齢別

サブグループ解析

50~59歳 3/3492 87/3525 96.6%
60~69歳 2/2141 75/2166 97.4%
70歳以上 1/1711 48/1724 97.9%
  • 70歳以上における帯状疱疹の発症
年齢 帯状疱疹発症症例数/評価対象例数 有効性(95%CL)
シングリックス群 プラセボ群
70歳以上 23/6541 223/6622 89.8%

年齢別

サブグループ解析

70~79歳 17/5114 169/5189 90.0%
80歳以上 6/1427 54/1433 89.1%

■帯状疱疹後神経痛PHNの発症に及ぼす影響

 帯状疱疹後神経痛を発症した被験者は、シングリックス群では0例、プラセボ群では18例でした(PHN発症の減少率100%(95%CL:77.1,100.0))

  • 50歳以上におけるPHNの発症

  • 70歳以上におけるPHNの発症

 

シングリックスの免疫原性は9年間!は保証付き

■細胞性免疫と体液性免疫についての復習

 獲得免疫(美容通信2021年1月号)とは、体内に侵入した特異的な異物に反応する特異的な免疫で、白血球の中でもリンパ球が活躍する免疫です。自然免疫とは異なり、後天的に学習して備わる免疫です。侵入した異物の情報をリンパ球が認識し、その情報に基づいて侵入した異物を排除する仕組みで、一度接触した異物の情報が記憶されるのも獲得免疫の特徴です。

 獲得免疫には、活躍するリンパ球の違いにより、細胞性免疫と体液性免疫に分けられます。

 細胞性免疫とは、細菌等に感染した細胞等をキラーT細胞が攻撃する免疫システムで、抗体の関与なしに異物(抗原)を除去します。これに対し体液性免疫とは、リンパ球のB細胞が活躍する免疫で、抗体が作られ、抗原抗体反応により異物(抗原)が排除される仕組みです。抗原抗体反応により、毒性が失われたり不活性化するので、マクロファージ等の食作用を受け易くなるのが特徴です。

■シングリックスの免疫原性

 シングリックスの免疫原性は9年間観察されています。

 細胞性免疫応答についてはgE特異的CD4[2+]T細胞の出現頻度を、液性免疫応答については抗gE抗体濃度を、初回接種108か月後に評価たところ、108か月後の細胞性免疫応答は接種前の3.4倍超、液性免疫応答は接種前の7.4倍超の結果でした。本試験に於いて、ワクチン接種と関連のある重篤な有害事象の発現は認められませんでした。

シングリックスの安全性について

 2つの国際共同第Ⅲ相臨床試験の併合解析(ZOSTER-006/022併合解析)に於いて、接種後7日間に報告された局所性(注射部位)の副反応は、3944/4884例(80.8%)に認められ、主なものは、疼痛3810例(78.0%)、発赤1863例(38.1%)、腫脹1267例(25.9%)で、持続期間の中央値は全て3.0日でした。また、全身性(注射部位以外)の副反応は、3159/4876例(64.8%)に認められ、主なものは、筋肉痛1949例(40.0%)、疲労1895例(38.9%)、頭痛1588例(32.6%)でした。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

 

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