CDPコリンで、慢性炎症をコントロール | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2016年7月号

CDPコリンで、慢性炎症をコントロール

image1043 慢性炎症性疾患には、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎や結膜炎等のアレルギー性疾患の他、多発性硬化症、リウマチ、胃腸性疾患、認知症、アルツハイマー病、自閉症等の神経性疾患、慢性炎症性疾患、心筋梗塞等の心臓血管疾患及び癌等が含まれます。
 また、広義では、肝斑や、虫刺されや怪我、火傷などの後の色素性沈着、くすみも慢性の炎症に含まれます。
 ホスホリパーゼA2(PLA2)は、これらの炎症の際に上昇します。
 ですから、尿中のPLA2の活性を測定する事で、これらの疾患のスクリーニングやリスク判定のみならず、臨床病期、転移、術後の再発、生存率等の評価、治療効果の判定を行うことが出来ます。
CDPコリンは、PLA2の強力な阻害効果を有するサプリメントで、唯一の副作用は、大量に服用した場合に、軽度の消化器症状を認めるくらいと、非常に安全性の高い成分で、安心して長期間の服用が可能です。
 記憶力の改善にも役立ちます。

 暫くの間に、統合医療は地道以上に進化を遂げていた!
先日行われた”ハニハイキ先生とショー博士から最新統合医療を学ぶ”の講演に行ってきました。いや~、目から鱗。とっても面白かったです。今回はそのダイジェスト版第1弾です。
今月号は<ホスホリパーゼA2(PLA2)尿検査とCDPコリン>です。

炎症とは、ラテン語で”火を付ける”が語源である。

 

image196 例えば、虫に刺されたところを想像しましょう。”炎症”とは、ラテン語で”火を付ける”が語源の通り、

  • 痛み
  • 赤み
  • 腫れ
  • 機能喪失   等の症状が出現します。

 この様な炎症を引き起こす要因には様々なものがありますが、生物学的なものとしては、①病原体による感染、②アレルギー反応、③その他の免疫反応、④ストレス等が挙げられます。化学的なものとしましては、①化学刺激物、②毒素、③アルコール等があります。
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image206 例えば、毒蛇や毒蜘蛛、蜂に齧られたり、刺されたりするとしましょう。痛みや発赤、腫れ、熱感等々、半端ない炎症が起こりますよね? 炎症自体は、体に対する自然な免疫システムの反応なんですが、この際、ホスホリパーゼA2(PLA2)なる酵素が活性化されます。PLA2は、端的に表現すると、怒れる神。ベトナム戦争の時にアメリカ軍が使用した、極めて高温(900-1,300度)で燃焼し、広範囲を焼尽・破壊するナパーム弾(^^♪みたいな存在ですかね、ははは。あ奴らの分泌する毒には、このPLA2が含まれているだけでなく、PLA2の刺激剤であるメチリンで主に構成されています。メチリンは26のアミノ酸配列からなるペプチドです。
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怒れる神、ホスホリパーゼA2(PLA2)

 炎症ってものは、感染や怪我等の、降って湧いたような災害?に対する自然な免疫システムです。ホスホリパーゼA2(PLA2)は、この炎症に於ける中心的な人物で、タカ派とか怒れる神との異名があります。

 ホスホリパーゼA2(PLA2)は、ひとたび目覚めると(=活性化されると)、免疫系の一部として、強力な抗菌及び抗ウィルス特性を発揮します。細菌の細胞膜や、真菌、寄生虫等のリン脂質を分解し、病原体を徹底的に攻撃を仕掛けます。しかしながら、やんちゃが過ぎるというか…怒りで頭に完全に血が上った状態と化してしまう、これを最近はキレると表現するらしいんですが(笑)、ご主人様である人様の細胞膜まで攻撃し、損傷を加えるという、全くせんでもええ事までしてしまいます

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 上図の如く、これ等の有機体、レゾレシチン及び遊離脂肪酸を除去する役割りを持つホスホリパーゼ反応の生成物は、細胞膜を損傷し、蛋白質を変性させ、それらの生化学的機能を破壊する強力な界面活性剤となります。PLA2活性によって生成されるレゾレシチンは、疼痛反応の媒介役となっています。

 ホスホリパーゼA2(PLA2)によって生成される最も一般的な遊離脂肪酸は、アラキドン酸です。アラキドン酸は、強力な炎症の媒介役とも言える、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンの産生を増加します。因みに、このプロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンは、十把一絡げで、エイコサノイドと呼ばれています。

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 ホスホリパーゼA2(PLA2)は、一般的には人様の体の組織に存在するだけでなく、昆虫や蛇毒にも含まれている酵素なので、毒って接頭語のある蛇だとか蜘蛛だとか虫だとかに、噛まれたり、刺されたりすると、この様に、私たちの生体反応以上の被害(炎症)を被る羽目に陥るのです。ところが、このホスホリパーゼA2(PLA2)は、体の組織や免疫系の細胞だけで生産されるのではなく、脂ごってりの食事の際に、そのリン脂質の消化吸収を助ける為にも、膵臓と小腸からも放出されます。

 ちょっと懐かしい、アトピー性皮膚炎の特集(美容通信2007年4月号)でも載せた局所炎症の図です。思い出しましたか?
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 食事とアトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患の増悪には、ホスホリパーゼA2(PLA2)が、実は関係しているのです。ω3系、ω6系の脂肪酸については、EPAの特集(美容通信2010年6月号)を読んで下さいね。

 また、ホスホリパーゼA2(PLA2)は神経組織でも作られ、ニューロンによって神経伝達物質を脱顆粒し、放出する過程にも関与しています。つまり、前述のエイコサノイド(プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンの3兄弟!)は、神経細胞に於ける炎症の発生とその遷延に、大いに関係してるって事なんです。
image962例えばですが、ちょっと皮膚科的な話からは外れちゃうんですが、右図は、統合失調症とそうじゃない脳みその画像です。ホスホリパーゼA2(PLA2)の活動は、image964左図の如く、統合失調症に於ける(MRI)脳の構造変化と関連している事が分かっています。怖いですねぇ。

 ざっくりまとめちゃうと、のべつ幕なしのホスホリパーゼA2(PLA2)の垂れ流しによる炎症は、多発性硬化症、リウマチ、胃腸性疾患、アレルギー、神経性心疾患、慢性炎症性疾患、心血管疾患及び癌と関連性が大きく、最近大いに注目を浴びている分野なのです。

ホスホリパーゼA2(PLA2)の活性度の上昇の原因は?

image1048 ホスホリパーゼA2(PLA2)2の活性を上昇させる原因としては、様々なものがあります。
 物理的外傷や傷害を受けると、体の中のホスホリパーゼA2(PLA2)の活性がぐい~んと急上昇し、殆ど完全にとばっちりでしかないんですが、組織損傷や脳障害を引き起こします。急性膵炎も、結果としては血流へPLA2を放出し、身体への過大な損傷を引き起こす場合があります。ウィルスの感染の他、ガラガラ蛇や、毒蜘蛛、蜂の毒もそうです。カンジダ・アルビカンスや特定のクロストリジア菌等は、ホスホリパーゼA2(PLA2)を自らが産生する事で、菌自体が粘膜内層に侵入しやすい環境を整え、私達の体の中にがっちり寄生の足場を作るんだそうです。

ホスホリパーゼA2(PLA2)の検査をお勧めしちゃう疾患達を列挙!

 ホスホリパーゼA2(PLA2)は、精神病や統合失調症を始め、炎症性疾患や、多発性硬化症、リウマチ、胃腸性疾患、アレルギー、癌等の様々な疾患に於いて、値の上昇が認められます。

  • 多発性硬化症
  • リウマチ性関節炎
  • クローン病
  • 膵炎
  • 潰瘍性結腸炎
  • アレルギー
  • アテローム性動脈硬化を含む心臓血管疾患
  • 神経変性病
  • 統合失調症
  • 双極性鬱病
  • カンジダ感染症
  • 敗血症
  • 長期抑圧(LTD)
  • 喘息
  • 慢性閉塞性肺疾患

ホスホリパーゼA2(PLA2)と炎症疾患

image1049 上記に列挙した様に、ホスホリパーゼA2(PLA2)の活性を測定する事は、脳卒中や心筋梗塞、心不全等の心臓血管疾患のリスクを判定する上で、非常に有用な検査です。C反応性タンパク質の検査なんぞと比べても、リスク判定としてははるかに優れています。論文(Current Cardiology Reports 2009,11:445-451)によると、

  • PLA2酵素は、リポタンパク質の再構成、炎症誘発性の生物活性脂質の生成、及び炎症経路の活性化を含むアテローム性動脈硬化症に於ける複数の段階に関与しているんだそうです。
  • PLA2を発現した遺伝子組み換えのマウスでは、泡沫細胞形成とアテローム性動脈硬化症の増加が認められたにも関わらず、
  • PLA2活性の阻害剤(CDPコリン)を使用すると、アテローム性動脈硬化症の減少が観察されたんだそうです。

ホスホリパーゼA2(PLA2)と癌

 色々な癌で、ホスホリパーゼA2(PLA2)の活性度が上がっている事が報告されています。(Cai H, et al. (2013) Elevated Phospholipase A2 Activities in Plasma Samples from Multiple Cancers. Plos ONE 8(2): e57081. doi: 10.1371/journal. pone.0057081)

  • 血漿中のPLA2の値を測定すると、大腸癌(n=33)、肺癌(n=95)、膵臓癌(n=38)、膀胱癌(n=31)では、健康な人(n=79)と比べて、明らかに値が高い!
  • 大腸癌では、癌の初期段階の方が、後期よりも活性が高い
  • PLA2の活性は、性別や、喫煙の有無、アルコール摂取量、体格指数(BMI)で値が変動することはないんです。
  • 癌の患者では、約70%で血漿中のPLA2の値が上がっていたんだそうな。→癌のスクリーニングに有用

 また、Ⅱa分泌ホスホリパーゼA2(sPLA2Ⅱa)と肺癌についても、報告がなされています。(M. WANG, et alEuropean Review for Medical and Pharmacological Sciences 2014;18:2648-2654 Group Ⅱa secretory phospholipase A2(sPLAⅡa) and progression in patiens with lung cabcer)
image992 左図を見て下さい。PLA2は、癌のスクリーニングとしても有用な事が分かります。更に、論文によれば、切除した肺腺癌の組織を調べ、そのALP2の活性が、臨床病期、転移、術後の再発、生存率と大いに関係があったそうです。

ホスホリパーゼA2(PLA2)の暴挙を押し止めるモノ

 私達の体が産生するコルチゾール等のグルココルチコイドや、デキタメゾン等の薬剤は、ホスホリパーゼA2(PLA2)の産生を阻害し、PLA2によって引き起こされる様々な被害を食い止めてはくれますが、元々のPLA2の存在意義である、有害微生物を殺せなくなってしまいます。例えば、結核で考えてみましょう。過剰なグルココルチコイドは、結核の炎症を軽減はしてくれますが、そもそもの病気の原因である細菌と戦ってくれるPLA2を損ない、病気の拡大を阻止出来なくなってしまいます。過ぎたるは猶及ばざるが如しです。

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 他にも、お薬で使われるリチウム、カルバマゼピン、抗マラリヤ薬のクロロキンは、PLA2阻害剤ですし、広くはビタミンE美容通信2007年3月号)、エイコサペンエン酸(EPA)美容通信2010年6月号やドコサヘキサエン酸(DHA)(脂肪酸のω3系で~す!)もPLA2を抑制してくれます。後述のCDPコリンも、また、強力なPLA2阻害剤です。

CDPコリン

image995 リン脂質形成の前駆体であるCDPコリン(シチジン5ジホスホコリン)は、パーキンソン病、記憶障害、血管性認知障害、老人性認知症、統合失調症、アルツハイマー病、頭部外傷、虚血性脳卒中等の様々な障害に対し、治療で使われています
 CDPコリンについては、様々な報告がなされてはいます。

image998 脳みそ系については、こんな論文がありました。(Inhibitors of Brain Phospholipase A2 Activity: Their Neuropharmacological Effects and Therapeutic Importance for the Treatment of Neurologic Disordes AKHLAQ A. FAROOQI, et al Pharmacol Rev 58: 591-620, 2006)

  • CDPコリンは、PLA2の活性を抑制し、用量及び時間依存性で、遊離脂肪酸の濃度を低下させます。
  • ジアチルグリセロールからレシチンの合成を増加させて、虚血性損傷後のレシチンの濃度を回復し、PLA2活性を抑制します。
  • PLA2活性が減少すると、神経膜は安定化するだけでなく、アラキドン酸及び反応性酵素種のレベルも確実に低下します。
  • CDPコリンは、グルタミン酸媒介性神経毒から、小脳顆粒ニューロンを保護してくれます。つまり、CDPコリンが、興奮毒性から神経細胞を守ってくれる!って意味なんです。
  • CDPコリンは、脳卒中の治療として第Ⅲ相試験に使用されています。アルツハイマーやパーキンソン病の治療にも良いらしいんだとか。
  • 60歳以上の記憶力の改善に良いらしい❤
  • CDPコリンは、神経変性疾患だけでなく、急性神経外傷の治療にも効果的なんだそうな。

 アルツハイマー病、特にイプシロン-4アポリポタンパク質E遺伝子型に効果的で、CDPコリン(1000mg/日)の服用で、患者に負担が少ないにも関わらず、認知能力、脳血液潅流、脳生体電気活動パターンに改善が認められました。(Exp Clin Pharmacol. 1999 Nov; 21(9): 633-44..Double-blind placebo-controlled study with CDP choline in APOE genotyped Alzheimer’s disease patients. Effects on cognitive performance, brain bioelectrical activitiy and cerebral perfusion. Alvarez XA, et al)

 他にも、コカイン依存症や老化等々にも効くみたいです。

 低服用での副作用はなく、大量に飲んだところで、軽い消化器症状が認められるくらいで、と~っても安全。実際、CDPコリン服用後に採血検査を行っても、全くデータ上異常な変化は認められんかったんだそうな。通常は、1日1カプセル(250mg)ですが、何か症状が出ている場合や検査の値が高い時は、500mgが推奨されます。

image207 右図は、クリニックで取り扱ってるCDPコリン(サプリメント)。能書きをそのままコピペしちゃいますね。日本に代理店がないせいか、googleの翻訳使いました?的な文章です(笑)。
「シチジン二リン酸コリン(CDPコリン)は、神経細胞の機能と、それらを保護するエミリン鞘(髄鞘)に重要であるホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの脳レベルを復元する、コリンの活性リポトロープです。また、CDPコリンは、アセチルコリン(記憶力への効果)、ドーパミン(微細運動制御や気分のコントロール)、及びノルエピネフリン(精神活力)等の主要な神経伝達物質の脳内レベルを増加させ、身体の炎症を増悪させるPLA2の活性を阻害する事が分かっています。CDPコリンは、炎症に傾きがちな状態を是正し、脳と身体の状態を最適に保つようにしてくれるサプリメントです。」

*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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