HISAKOの美容通信2007年2月号
フラクセル(フラクショナルレーザー)
レーザーの力でダメージを受けた肌のターンオーバーやコラーゲンの生成を促進し、自然で若々しい健康的な肌に導く”フラクセル”。 今や、トータルな若返りの定番として、又、ニキビ跡や毛穴治療として有名ですが、最近は、炎症後の色素沈着の治療にも盛んに応用されてます。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、華道(かどう)とは、草花や樹木などの植物材料を組み合わせて構成し、鑑賞する芸術である生け花に、道としての側面を加えたもの。日本発祥の芸術で、国際的に広がっている。花道とも表記し、またいけばなとも呼ばれる。ただし「華道}という呼称には「いけばな」よりも求道的側面が強調されている。 さまざまな生花をいけるが、どの草花・樹木も頭が重いので、唯水盤や花瓶に放り込んだだけだと、倒れてしまう。倒れないように、そして3次元的に美しく植物を飾る為には、根元で固定をしてくれる”剣山(けんざん)”の存在が不可欠である。鉛等の金属の上に太い針を多く植えた”剣山”は華道の影の立役者と言える。最近はこの従来の華道とは別に、若返りの為に顔や首、手等に刺すと言う方法”フラクセル道”が米国で流行し、日本にも逆輸入されて来た(←ホントかいな(笑))。道具が主役を食って、戻って来た‥。それが、”フラクセル”です。 こんな阿呆っぽい説明で納得出来ない常識人の方はお読み下さい。
剣山(けんざん)と言う概念
道路工事は、一気に行うべきか、否か? HISAKOの家の前の道路は、年中、ちまちま工事をやってます。片側車線になって不便だとは思いつつも、どっか~んと通行止めやられるよかマシだから、まあ、良いかなと許容しています。アメリカのロードムービーに出て来る様な人気の無い砂漠の中のハイウェイなら、閉鎖して、一気に工事をしてしまうのも良いかも知れません。四季もはっきりとしない情緒のない毛唐の国なら、確かにそれも手だとは思います‥。 1995年、アメリカでは、CO2(炭酸ガス)レーザーで皮膚の表面を一気に蒸散・熱変性させ、新しい肌を再生させるLaserResurfacingが大流行しました。確実に10歳は、若くなります。発想は、ベトナム戦争と一緒。あいつ等は変らない。大量のナパーム弾で、ゲリラ兵を村ごと焼き払いました。炭酸ガスレーザーで、老化した醜い肌を焼き払いました。新しい従順な国家、新しく若返った肌を手に入れる為に。前者(ベトナム戦争)が失敗に終わったのは、周知の事実です。重いトラウマが残りました。後者は‥、素晴らしい肌を手に入れた白人の御婦人方にとっては大成功でした。半年以上続くダウンタイムと言う大きな代償を払っても、得る物は実に大きかったのです。‥海の向こうの画期的な若返り方法に、猿真似が得意な黄色人種が早速飛びついたのも無理はありません。しかし、白人と黄色人種では肌が違います。白人は言葉通りメラニン自体が少ない上に、皮膚が薄く、畳針で顔を縫っても綺麗に治っちゃうイモリ級の再生能!?を有する人種。デリケートな黄色人種にはとても太刀打ちなんて出来やしません。白人ではあり得ない高率での色素沈着やケロイド形成のリスクと言ったマイナス面に、驚き慌てて退散しました。LaserResurfacingは、黄色人種には不適切な手技でした。 白人にも賢い人はいます。黄色人種にも、黒人にもいるのと同じです。賢い人は考えた。LaserResurfacingは素晴らしい方法だが、白人相手とは言え、半年以上も続くダウンタイムはやはりいただけない。黄色人種や黒人の市場にも器械が売れないのも面白くない。‥じゃあ、LaserResurfacingを分割したらどうだろう? ダウンタイムとリスクを最小限に抑えつつ、同様の効果は得られないだろうか? これが、”フラクセル”と言う概念です。端的に表現すると、因幡の白兎じゃあ余りにも辛過ぎるから、剣山(けんざん)で皮膚に穴を開けて若返ろうって事です。苦肉の策? 妥協の産物? ですが、ダウンタイムとリスクを最小限に抑えつつ、確実に若返ります。 フラクセルの売りは、何と言っても、特定のトラブルではなくて、肌全体に散在するトラブルを複合的に治して行く事。シミ、皺、毛穴の開き、くすみ、血管拡張、ニキビ、ニキビ跡etc.が、じわ~と総合的に良くなります。でも、<このシミを消したい!><目尻の皺だけが気になる!>と言った特定の症状には、即解決策とはならないので、適応外です、悪しからず。
剣山で皮膚に穴を開けると、何が起こる?
剣山で穴を開けると言っても、そこら辺で売っている生花用の金属製の剣山で開ける訳ではありません。波長1.54nmのレーザー光線(microbeams)で、ミクロン単位の穴を一定間隔で開けて行きます。 本来あるべき物ではない穴が皮膚に開いてしまったら、体はどうするでしょう? 傷は治さねばなりません。詳しい創傷治癒(傷の治り方)については、美容通信2004年5月号を読んでもらえれば思い出すんじゃないかなぁと勝手に希望的観測してますが、あまりにも小さいミクロン単位の穴なので、周囲の無傷の細胞達がとっとと分裂して修復してしまいます。其れなりに穴がデカければ、瘢痕で穴埋めをしなければ間に合いませんが、この程度の穴のサイズなら瘢痕の出る幕はありません。LaserResurfacingは、顔全体をこの穴レベルで皮を引ん剥いたから、瘢痕のリスクが高かったんです。フラクセルは飛び地だから、周囲からの修復が期待出来たんです。 レーザー屋さんは、これをこんなコピーで表現します。
長年使い古した肌を脱ぎ去り、新しい肌に<入れ替える>最新美肌治療
フラクセル従来の美肌治療は、レーザー等でメラニンを破壊したりコラーゲンを増やしたりと、出来てしまったシミや皺を<改善>するものでした。それは、数十年使い続けている洋服にアイロンやシミ取り等のお手入れをするのと同じ様な事。フラクセルは、古い洋服を捨て新品に交換するかのように、肌そのものを新しいものに<入れ替え>してしまう全く新しい治療です。
ちょっと誇大広告なんじゃないかとは思わなくも無いですが、原理を考えると、この表現は確かに正しい‥。 更にレーザー屋さん曰く、1.54nmって波長は角質層にはダメージを与えない為、皮膚のバリア機能を損なう事なく(感染のリスクが無い!)、治療直後からメイクもバッチリです。‥しかし、後でHISAKOの体験コーナーを読んでもらえば分かると思うけど、その日はメイクするなんて気にもなれない。翌日は、引き締まった顔が嬉しくて、HISAKOのメイク魂が炎上しましたけど‥、ははは。(所謂ディープピールした時の様な<2~3週間は人目を憚って生きていかねばならぬ>なんて心配は、全く無用です。御安心を!)
剣山を大解剖しちゃいます♪
最初にちょっとだけ器械の説明をしますが、本体に先端を色々付け替えると、フォトフェイシャル(IPL)にもなるし、フラクセルにもなるし、Nd:YAGにもなるしと‥、現在9種類の異なる機能を持った先端がある、まるで衣装持ちのバービー人形みたいなアメリカ製の器械です。左上の写真はLuxGってIPLの先端が付いてますが、今回は右上の図の様なシャワーヘッドみたいなフラクセル先端に付け替えます。 先端を覗いて見ましょう。トンボの目みたいになってますね。ここからmicrobeamsを発射! イメージが沸かない? じゃあ、黒い紙に照射してみましょう。見事、剣山で穴が開けたみたいですね。 microbeams攻撃を受けた皮膚の断面です。microbeamの強さによる効果の具合を、とくと御覧なさいませ。こんな攻撃されちゃったら、安穏と隠居状態の皮膚だってビックリして炎症反応を起こしちゃいますよね。お祭り好きの線維芽細胞が騒ぎを聞きつけ集まりだしたら、もう止まりません。熱気はムンムン。コラーゲンの屋台は商売繁盛で、屋台のオヤジは気が狂った様にコラーゲンを作り続けます。角化細胞もどんどん分裂して、仲間を増やして行きます。まあ、肌が否応なく、老骨に鞭打たれて、若返りさせられたって事ですかねぇ‥。まあ、当然の事ながら出力を上げると、効果は上がりますが、その分赤くなったり、腫れたり、場合によっては痛みを感じる様になります。 細かく言うとこの先端には、更に2種類のスポットサイズがあるんです。用途に合わせて、使い分けをします。
スポットサイズ(mm) | 15 | 10 |
進達度(mm) | 0.6 | 1 |
microbeamの強さ(mJ) | 10 or 15 | 5~70 |
パルス幅(ms) | 5 or 10 | 5 or 10 |
照射密度(cm2) | 320 | 100 |
基本的に、スポットサイズ15mmのものは、浅く、その分沢山のmicrobeams(照射密度が高い)を照射するから、表皮アプローチに向きます。表皮のリモデリングによる肌理の改善・美白作用に優れますが、照射密度が高いので、その分副作用がスポットサイズ10mmのものに比べ多少出易くなるって欠点があります。因みに代表的な副作用としては、局所的若しくは全体的炎症後色素沈着、発赤、痛みが上げられます。シミ、雀斑、小皺、肝斑がメインターゲットです。個人的には、肌が締まると言うか、ピ~ンとリフトアップして白く垢抜けた感じが堪らなく嬉しいので、専らこっちを自分用には愛用中かな。 それに対し、10mmのものものは深いけど疎らにじっくり焼くから、真皮アプローチに向きます。ですから、真皮構成成分の増加、再構築による皮膚のテクスチャー(凸凹)の改善には絶大な効果! にきび跡、毛穴の開き、ちょっと深めの皺がメインターゲットです。まあ、一緒に白人の写真を載せときます。繰り返すけど、黄色人種と白人では皮膚が違うんだから、白人並みの効果はくれぐれも期待しちゃいけません! 白人の額のシワとカラスの足跡の、使用前・使用後です(Palomar Medical Technolgies, Inc.提供)。因みに、額の人の使用後の写真は、4回照射後10日目。カラスの足跡の人の使用後の写真は、3回照射語3週間後だそうだ。 纏めると、フラクセルは、microbeamの強さ(mj)とスポットサイズ、進達深度が正比例するんです。つまり、真皮への働きかけを大きくしようとして、より強いエネルギーで照射すると、剣山の穴同士が密集し過ぎて、肝心の正常皮膚が熱でやられてしまいます。つまり、炭酸ガス(CO2)レーザーやEr:YAGレーザーで、LaserResurfacingを行ったのと同じになってしまいます。これでは、折角の分割して副作用を軽減すると言う、フラクセル最大の持ち味を生かせません。炎症後色素沈着が発生するかどうかは、臨床経験より、照射深度よりも寧ろ照射密度に左右される事が分かっています。ですから、副作用のリスクを抑えつつ、特に真皮への臨床効果を高めるには、この照射密度をコントロールする必要があるんです。特に黄色人種である私達は、毛唐(白人)と異なり黄色人種は元々色素沈着を来たし易い人種ので、黄色人種の為のプロトコールとして、ミニフラクセルと言う治療方法が提唱されています。 つまり、色素沈着を防ぎつつより高い効果を得る為の入門編としては、高出力で照射密度を減らす方が良いみたい(この場合、真皮アプローチに分類されます)。勿論、施術前後のビタミン剤の内服やイオン導入、漂白剤の併用etc.で、予防線を張っておくのも当然のお約束です。(註:漂白剤だけは、赤みが引いてから使用再開♪) 日焼け止めは、美人になりたい人なら治療をするしないに関わらず、必須ですよね。また、フォトフェイシャル(IPL)etc.の治療と組み合わせて、分業って考え方もありです。 表皮のアプローチをメインにしたい場合は、低出力(mJ)、高密度設定から始めます。前述の高出力&低密度よりも副作用のリスクが上がりますから、当然併用療法等は必須とお考え下さいませ。 <赤みは絶対嫌!>の超慎重派・心配性さんなら、保守的な設定(←保守的って言葉はこんな風にも使うんだ‥)、つまり、低エネルギーレベル&低照射密度からのスタートだってありです。回数を稼げば好いだけの話ですから! 尤も、どんな過激派さんであったとしても、鼻や唇の周囲、額やこめかみと言った所謂難所は、強制的に、低エネルギーレベル&低照射密度でしか照射はしません。又、肝斑にも、アメリカのFDA(食品医薬品局)の認可済みとは言うけれど、黄色人種にとっては色の問題だけじゃなく、腫れ(最低48時間は浮腫が出る可能性が高い!)の問題も付いてくるので、低エネルギーレベル&低照射密度による照射はお約束です。悪しからず。 後は肌質や患者さんの希望に合わせて、パラメーターをその都度調整して行きます。
さあ、顔に剣山で穴開けようぜぃ!~HISAKOの体験コーナー~
まあ、うちのクリニックは、完全にHISAKOの趣味の世界と言うか、趣味が高じてクリニックやっちゃいました系なので、HISAKOが自分の顔にやりたいから絶対欲しい!!って思うものしか置いてないのよね。ほほほ。このフラクセルは、学会とかで話は聞いて知ってたけど、どうしようかなぁって迷ってたのよね。レーザー屋の営業って、美味しい事しか言わないんだもん。でも、まあ、試してみない事には器械の価値なんて分かんないじゃない? 男と同じで(笑)。だから、デモ機をクリニックに持って来てもらって、自分の顔で試してみました。右半分だけ(笑)。う~ん、HISAKOは肌の質感を上げたかったので、浅くて、穴が一杯♪の15mmの先端をチョイス。パワーはアメリカの白人おばさんの3/5程度だし、穴の数も3/5程度(320×3pass=960個/cm2)の控え目からデビューしました。あ、因みに右は照射前日の写真で~す。 痛み? 麻酔のクリームをたっぷり使ったので、全然痛くなかった。(まあ、塗らずに試し打ちした時には、可也凹みましたがね。) 照射直後にクーリングして、消炎効果のあるパックして‥、でも、直後は、日焼けし過ぎた時みたいにヒリヒリ火照るし、腫れるし、赤いし、思わず鏡を見て笑っちゃう顔。治療直後からメイクもバッチリとは言われても、実際、何もする気は起きないですね。帽子を深く被り、人目を避けて、さっさと帰りましょう。HISAKOは、喉もと過ぎれば熱さ忘れる典型的タイプなので、のほほ~んと仕事帰りに”DEAN & DELUCA”で遊んでいたら、擦れ違う人々に、”あ、ヤバイもの見ちゃった!”って目で見られちゃいましたけどね。 翌朝、顔の右半分だけピ~ンとリフトアップと言うか締まってる!のを感じて、目が覚めました。大げさじゃないですよ、ホント。思わずパジャマのまま鏡の前に走っちゃいました。確かに赤味は残っているけど、肉眼的にも確実若返っている! もう、こうなったら即電話ですよ。「照射しなかった左側を何とかしてくれ~っ!!」てね(笑)。あ、写真、照射翌日の写真です。 2~3日は赤味は残ります。と言っても、翌日でこんな程度。因みに、メイクはファンディーションは塗らず、日焼け止めにお粉叩いた状態です。 赤味が引いた頃つまり3~4日後、肌を触ると、規則正しいドット柄に配列した可愛い(?)瘡蓋を指先に感じます。ザラザ~ラ! 鮫皮みたい♪ 山葵下ろしちゃおうかしらなんて言うのは冗談ですが、良く目を凝らして見ると、レーザー照射部分に一致して、目に見えるか見えないか位の極小の瘡蓋がへばり付いてます。良く目を凝らすがポイントで、ボケ~っと眺めた程度では分かりません。数日しないうちに、いつの間にかドット柄の瘡蓋もポロポロと剥げ落ちて、ツルるんゆで卵になります。 左の写真は照射後2ヵ月後です。唯、前回は右しか打ってない写真でしたが、流石に泣きが入ってしまったので、左側も追加打ちして揃えてみました。因みに、メイクはファンディーションは持っていないので塗れず(笑)、日焼け止めにお粉叩いた状態です。 分割して入れ替えを図る=1回に入れ替わるのは12~20%だから、殆ど全部の皮膚が入れ替わるには‥、算数的には5,6回の施術が必要って事になります。治療間隔は因みに2~4週間と言われますが、黄色人種は4週間に1度のペースで十分かなと思います。短期集中型肌交換治療って訳ですかね。 でも、肌の悩みは複合的で、温度差と言うか、個人差がかなりあります。シミ、皺、毛穴の開き、くすみ、血管拡張、ニキビ、ニキビ跡etに全般的にはフラクセルは効果がありますが、より上級者を目指すなら、やっぱりコンビネーション治療がベスト。例えば、フラクセルのちょい苦手な赤みやシミもさり気なくって場合なら、フォトフェイシャルと同日にミニフラクセルを併用するのが良いでしょうし、ニキビ&ニキビ跡さんなら、ケミカルピーリングと同日併用で両者の欠点を補い合うのも手です。女性ホルモンのバランスが崩れる40~50台の方なら、フラクセルの直後に女性ホルモンも含有したポアテーションシートを併用するのは勿論ですが、1ヶ月に一度の割合でフラクセルのみを集中的に半年行うより、2ヶ月に一度の施術でも良いので、その代わりにメソセラピーを2週間に一度の割合で行って、継続的にホルモン系のバランスを保っている方が良かったりもします。ケースバイケースです。ですから、クリニックでDr.やスタッフと相談しながら、メニューを組み立てて行くのが一番美味しいフラクセル利用法だとも言えますね。
フラクセル料金改定のお知らせ
●顔面積1/3 本体価格 1万5000円+TAX ●1ショット 本体価格 3000円+TAX*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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来月号の予告
”分子整合栄養医学”に基づいた栄養療法的解釈から、貴女の体に必要な栄養素を、3ヶ月に一度採血して分析。 これが究極のオーダーメード・サプリメントです。 来月号は、<検査値の裏読み>です。